親権・監護権Q&A
Q1 親権と監護権は、どう違うの?
Q2 共同親権は無理なの?
Q3 子供の親権・監護権は、どうやって決めるの?
Q4 裁判所が、子供の親権・監護権を決める際に、一番重視するものは何?
Q5 夫と不仲になり、子供を連れて実家に帰ったら、夫が乗り込んできて、私から無理やり子供を奪っていきました。どうすればいいの?
Q6 夫に「子供の引き渡し命令」が出たけど、子供を返してくれない。どうすればいいの?
Q7 子供の監護者指定の審判、親権の帰属を決める訴訟で、言ってはならない言葉ってある?
Q8 おじいちゃん、おばあちゃんは孫の監護者になれるの?














 

        
Q1.親権と監護権は、どう違うの?
A1.子供を現実に養育するのが監護権。これに子供の財産管理権を
   加えたのが、親権です。
  
   
 親の子供に対する親権は、身上監護権と子供に対する法律的財
 産的な管理権を内容としています。

 監護権というのは、子供を現実に育てる権限で、管理権というの
 は、子供の代理人として法律上・経済上の管理をする権限です。

 ただ、子供の奪い合い事件では、離婚前は監護権の帰属をめぐっ
 て争い、離婚後は親権の帰属をめぐって争います。

 だから、子供の奪い合い事件では、離婚した場合に、子供をどちら
 が引き取るかが親権の問題(親権監護権不分離の場合)で、離婚
 せず別居状態の場合に子供をどちらが育てるかが監護権の問題
 だと考えて間違いではありません。

 ちなみに、離婚した際の親権の帰属について、統計上、8割は母
 親、その余が父親、または親権監護権の分属となっています。

 子供の問題については、やはり、母は強し、ということでしょうか。 























 

        
Q2.共同親権は無理なの?
A2.無理です。  
   
 離婚に際しては、両親のどちらかを親権者と定めないと規定して
 あることから、共同親権は、現行法上不可能です。欧米先進国
 は、現在、共同親権が主流なだけに、日本の不制度は、非常に
 特殊な例といえましょう。


 単独親権の親族法を制定した時、立法者が、はたして、どの程
 度、子供の精神的な成長を考慮していたか疑問です。

 離婚すると子供は当然に単独親権になり、どちらかが親権を失い
 ます。しかし、これは、逆から見れば、離婚すると親権を剥奪され
 ることになります。別の面から見れば、「金を払う」以外の責任は
 免除されることになります。

 しかも、この単独親権の不備を補うべき子供と別れた親との面会
 交流は、実務上は認められているものの、これを正面から認め
 た条文はありません。

 どうも、現在の家族法は、「金さえ払えば」的な思考があり、子供
 の教育福祉の観点が完全に欠落しているように思われます。

 単独親権制度の結果として、現在、各地の裁判所で、子供をめぐ
 る奪い合い事件が多数係属しています。

 離婚の最大の被害者は子供ですが、それは、離婚そのもので傷
 つくというよりも、両親の葛藤に子供が巻き込まれることによって
 傷つくのですが、単独親権制度は、離婚による被害を拡大する機
 能を果たしています。

 現在の教育学・心理学では、DV等を除けば、両方の親との接触
 を続けることが、子供の発育に最良であるとされています。離婚後
 も、両親が何らかの形で子供の養育に関わることを制度化する時
 期に来ています。














 

        
Q3.子供の親権・監護権は、どうやって決めるの?
A3.当事者の合意で決めます。合意できない時は、「子供の福祉・子
   の最善の利益」の観点から、裁判所が決めます。

   
 離婚には異論はないが親権者を誰にするかが決まらない、あるい
 は、当分の間別居することに同意はしたけど、その間、どちらが子
 供を育てるか決まらない。こういうケースが、最近、非常に多く、う
 ちの事務所でも、常時、かなりの件数を扱っています。

 裁判所にとって、判断基準は、「子供の福祉」「子どもの最善の利
 益」という基準、ただ一つしかありません。夫婦は、どうしても、離婚
 騒動の勝敗という観点から、子供の奪い合いをしてしまいがちです
 が、裁判所は、「より子供の福祉に合致するのは、どちらか」という
 観点から判断します。

 そして、この判断は、次の3つの原則に基づいて行われます。

 【継続性の原則】

 現在の監護状況に問題があるかないか、を判断し、問題がなけれ
 ば、現状を優先するというものです。もちろん、今は子供を監護し
 ていなくても、それ以前に子供を監護していれば、その監護の実績
 も考慮されます。

 年齢が上がるほど、この原則が重視されます。


 【母性優先の原則】

 「子供を育てるのは、母親の方がよい」とする原則で、家庭裁判所
 には、かなり根強くある思想です。子供の年齢が低いほど、この原
 則が重視されます。ただし、裁判官や調査官の主観によっても、か
 なり結論が異なってくる原則で、裁判官の考え方によって結論が左
 右される部分が多い原則でもあります。

 ただ、最近は「母親優先の原則」とは言わず、「母性優先の原則」
 といって、生物学的な男女差よりも、現実に子供にどう接してきた
 かを判断しています。母親と言っても、あまり母性的でない母親も
 いるし、父親でも、母性に富む父親も多いからです。


 【比較考量の原則】

 これは、二人の家庭の環境を比べて、どちらがより子供に優れて
 いるかを判断するものです。

 ただし、母親と父親を比べる場合に、基準が若干異なり母親の場
 合は、経済的な環境は重視しませんが、父親の場合は、経済的
 な環境は、かなり重視します。

 

 このほか、子供の意思の尊重、面会交流の許容性、兄弟不分離
 の原則がありますが、子供の意思の尊重の原則には、配慮が必
 要です。

 最近は、これに加えて、Q5で述べるとおり、一方的な監護状況を
 作り出した経緯もかなり重視されます。














 

        
Q4.裁判所が、子供の親権・監護権を決める際に、一番重視するもの
   は?
A4.「子供の福祉」「子の最善の利益」です。
   
 家庭裁判所と当事者の認識が一番ずれるのが、この親権問題で
 す。
 
 裁判所は、親権を決める際、もっぱら、子供の観点からしか考え
 ません。「どうするのが子供にとって一番の幸福か」、裁判所の基
 準はそれだけです。

 ところが当事者の中には、離婚紛争における勝敗の観点から子供
 の親権の奪い合いをする方がおられます。

 その結果、「親権がとれないなら、養育費は払いたくない。払わず
 にすむ方法はあるのか?」という相談を、時折受けます。

 「親権がとれないなら、月一回程度、お情けで子供に会わせても
 らってもしょうがない。屈辱だ。会う必要はない。」と言って、面会交
 流を希望されない方もおられます。

 ただ、親権問題を配偶者との勝敗の観点からのみ考えている相談
 は、圧倒的に男性に多いですね。女性からは、こういう発言の類を
 聞いたことがありません。

 ここに女性と男性の、本質的な違いを感じます。

 ただ、欧米先進国では、子供との面会交流を親固有の権利ととら
 える考えが主流になっています。日本の家庭裁判所も、親権を奪
 われた親の無念さを、もう少し認識すべき時期に来ているように
 思います。














 

        
Q5.夫と不仲になり、子供を連れて実家に帰ったら、夫が乗り込んで
   きて、私から無理やり子供を奪っていきました。どうすればいい   の?
A5.裁判所に、子供の監護者指定の審判と保全処分、子供の引き渡
   しを求める審判と保全処分を、それぞれ求めます。
  
   
 両当事者の合意で一方が子の監護をしている場合、継続性の原
 則が機能して、その監護をしている親が監護者になることが多い
 です。

 しかし、強引に一方的な監護状況を作り出した場合は、継続性の
 原則を適用できません。実務で問題になるのは、ほとんど、このパ
 ターンです。

 まず一方が子供を監護しているのに、強引に押し入って暴力的に
 子供を連れ去ったケースでは、大体、裁判所から「子供を返せ」と
 命ぜられます。

 これに対し、面会交流中に連れ去った、あるいは、幼稚園から連
 れて帰った、となると、ケースにより裁判所の判断が異なってきま
 す。

 事務所で扱ったケースを集計してみると、あるおぼろげな基準が浮
 かび上がりますが、かなり幅をもっていると言わざるを得ません。

 一般論としていえば、連れ去りの違法性と上記3原則との兼ね合い
 で裁判所は決めているようです。 ただ、明確な内部基準というも
 のはなく、裁判官や調査官の個人的主観で結論が異なることが多
 いですね。ここが厄介な点で、いつも頭を悩ませます。

 同居しているときに、一方当事者が留守中に、子供を連れて実家
 に帰ってしまった場合については、ある程度、明確な基準がありま
 す。ただ、ケースによっては、判断できかねる場合も少なくないで
 す。

 ただ、大事なことは、もし不利と判断すれば、裁判のポイントを、
 「監護者指定」から、「面会交流実現」に変更することです。監護
 者や親権は、争えば争うほど、面会交流が難しくなるというのが現
 実です。 














 

        
Q6.夫に「子供の引き渡し命令」がでたけど、子供を返してくれない。
   どうすればいいの?
A6.裁判所に動産執行の申立をします。子供の監護者指定の審判と
   保全処分、子供の引き渡しを求める審判と保全処分を、それぞ
   れ求めます。
  
   
 それでは、現在、監護している親に監護権が与えられず、監護して
 いない親に監護権が与えられた場合、親は、どうやって自らの監
 護権を実現すべきでしょうか?

 たとえば、今まで父親が育ててきた、しかし、裁判所は、子供を母
 親に引き渡して母親が監護しろという審判を出した。こういう場合、
 相手が任意で子供を引き渡してくれればいいですが、引き渡して
 くれない時は、どうすればいいでしょう?

 唯一考えられる方法が、子の引き渡しに動産執行の方法を用いる
 方法ですが、実務上、確立した方法とは言えません。子供は動産
 ではないという反対論も根強いです。

 ただ、少なくとも、東京家裁では、この方法が用いられています。

 もちろん、子供が幼児の場合にのみとりうる方法で、子供が、例え
 ば10歳くらいの時は、この方法は無理があります。

 もっとも、子供が自由意思で動くような年齢になると、仮に法律の
 力で強引に子供を連れ去って監護者と指定された親に引き渡して
 も、子供は自分の意思で戻ってしまいます。結局、この問題に最
 終決着をつけるのは、法律でも裁判所でも親でもない。子供自身
 ということになります。














 

        
Q7.子供の監護者指定の審判、親権の帰属を決める訴訟で、言って
   はならない言葉ってある?
A7.子供に「ママとパパ、どっちを選ぶ?って聞いたら、ママ(パパ)と
   答えた」という言葉です。

   
 子の監護者指定・親権帰属問題では、子供の意思の尊重という原
 則がありますが、これは、子供が成長している場合か、調査官の
 調査に基づく場合です。

 一般論としていえば、このような発言はアウトです。裁判所は、子
 供に踏み絵を踏ませるとんでもない親だ、と考えます。裁判所は、
 このような発言をさせること自体が、親権者としての適格性を疑わ
 せる充分な証拠だ、と考えるんですね。

 「子供は、打算がない、なんでも正直に発言する」と裁判所は思っ
 ていません。子供は、自らが非常に弱い存在であることを無意識
 のうちに自覚しています。目の前の親が、自分にとって唯一の命綱
 だということを、意識するかしないかは別として、深層心理では自
 覚しています。

 その結果、子供は、目の前の親が、どういう答えを期待してそうい
 う質問をするか、無意識に自覚し、質問者が喜ぶような答えを述
 べます。

 だから、父親が問いかければ子供は父親と回答し、母親が問いか
 ければ子供は母親と回答する。

 そんな発言など、なんの意味もないと裁判所は考えています。














 

        
Q8.おじいちゃん、おばあちゃんは孫の監護者になれるの?
A8.残念ながら、なれません。  
   
 両親が別居している、どちらも、事情があり子供が育てられない。
 あるいは親としてふさわしくない、そのかわり、おじいちゃん、おば
 あちゃんが育てている。よくあるケースです。

 この場合、おじいちゃん、おばあちゃんは、親として子供を育てるこ
 とができない、あるいは、育てるにふさわしくない両親に、「これか
 らは私らが孫の世話をします。私たちが孫の世話をすることを法
 的に認めて下さい。」と言って、監護者の指定の申立ができるで
 しょうか。

 感情論的には認めてもよいと思われます。というのは、両親が子
 供を虐待しているとか、あるいはそこまでいかなくとも明らかに監
 護者としてふさわしくない、というケースが、あります。

 しかし、現在の法律では、これを認めることは解釈論としては、か
 なり苦しい。というのは、民法766条は、子の監護者の指定につい
 て「父母の協議が整わない時は、家庭裁判所が、これを定める」と
 していることから、監護者の指定というのは、父母であることが前
 提になっていると解されるからです。

 東京高裁平成20年1月30日決定は、おじいちゃん・おばあちゃんが
 監護者になることを否定しました。これは、現在の家裁実務に沿う
 ものです。

 ただし、弁護士や学者の間には、かなり反対論も有力に主張され
 ていますし、大阪高決平成16年5月19日判決は、祖父母に監護権
 を認めています。













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