養育費・婚姻費用Q&A
Q1 養育費と婚姻費用って、どう違うの?
Q2 養育費と婚姻費用は、どうやって決めるの?
Q3 別れた夫は信用できない。養育費を一括でもらうことはできるの?
Q4 毎月、決められた養育費をもらっているけど、子供が大病して、予想外の医療費がかかった。この医療費は請求できないの?
Q5 リストラで収入が激減した。決められている養育費を減額できるの?
Q6 中国人の女性との間で子供ができて、母子とも、中国にいるけど、養育費の算定にあたり、日本と中国の物価差は考慮されないの?



















        
Q1.養育費と婚姻費用ってどう違うの?
A1.離婚していない時は婚姻費用、離婚した後は別居費用
   
 夫婦が別居していても離婚していない場合が婚姻費用の問題、離
 婚した場合が養育費の問題です。

 離婚していない場合、夫婦には、相互に扶養の義務があります。
 言い換えれば、夫婦は、たがいに同レベルの生活を送る権利があ
 ります。

 ですから、別居している夫婦間に経済力の「格差」があるときは、こ
 の「格差」を埋めるべく、経済力ある配偶者から、経済力のない配
 偶者へお金を渡す必要があります。これが婚姻費用といわれるも
 ので、婚姻費用には、配偶者に対する扶養と子供に対する扶養の
 2種類の扶養が含まれています。

 夫婦が離婚すると互いに他人になりますから、相互に扶養の義務
 はなくなります。しかし、配偶者のどちらかが子供を引き取り監護し
 ている場合は、その子供の養育に必要な金額は、監護していない
 親も、その経済力に応じて応分の負担をしなければなりません。言
 い換えれば、子供は、離婚しなかった場合と、同レベルの生活を送
 らせる義務があります。これが養育費といわれるものです。

 このほか、子供には、親に対する扶養請求権があります。養育費
 と混同されますが、養育費は、子供を監護している配偶者の権利
 であり、扶養請求権は、子供固有の権利です。



























        
Q2.養育費と婚姻費用は、どうやって決めるの?
A2.当事者の合意で決めます。合意できない時は、裁判所の算定表
   に準拠し、裁判所が決めます。

   
 養育費・婚姻費用、いずれも、当事者間で協議して決めます。決め
 たら公正証書にするとよいでしょう。

 合意できない時は、家庭裁判所に申立て、家庭裁判所で決めても
 らいます。家庭裁判所は、原則として、養育費・婚姻費用算定表に
 基づいて金額を決めます。その一覧表は、最高裁のホームページ
 に載っています。

 ↓養育費算定表はこちら↓
 http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi
_santei_hyou.html


 算定表は、子供の年齢と人数に応じて10種類の表からできていま
 すから、この10種類の表から、自分のケースに該当する表を選び
 ます。

 算定表の横軸には権利者のの総収入が、縦軸には義務者の総収
 入がそれぞれ記載してあります。選んだ権利者の収入欄を上に、
 義務者の収入欄を右に伸ばし、両者が交差するところが妥当な金
 額となります。

 当事者間で協議する時も、この算定表を用いると何かと便利です。

 ただし、この算定表は、

 @子供が公立学校に通っている。
 Aそれぞれが自分の住居費を負担している。
 B権利者・義務者の収入が、公的書類で正確に把握できる。

 という前提でできています。

 そのため、子供が私立に通っている場合はどうか、夫が住宅ロー
 ンを支払っている住居に妻が住んでいる場合はどうするか、義務
 者が脱税している場合はどうか等、色々な問題が提起されていま
 す。

 これらの問題については、すでに内部基準ができているケースもあ
 れば、そうでない事案もあります。また、同じ問題について内部基
 準もいくつかあり、どの基準を取るかで、大きく結論が異なってく
 る場合もあります。

 また、この算定表は、母子家庭の現実を無視した金額だという根
 強い批判がある一方で、算定表の金額では、義務者の生活が成り
 立たない、という批判もあります。

























        
Q3.別れた夫は信用できない。養育費を一括でもらうことはできる
   の?
A3.当事者が合意すれば可能です。
   
 本来、養育費というのは、日々発生し、かつ、日々の状況に応じて
 変化していくものですから、一括払いということはありえません。家
 裁実務でも、裁判所は、養育費の一括払いを調停条項化するこ
 とはしていません。

 税務上も、養育費の一括払いはあり得ないという観点から、財産を
 信託化しない限り、課税することになっています。

 ただ、養育費の支払い期間と支払金額が決まれば、支払い義務
 者が同意する限り、これを一括で支払うことに何の問題もないし、
 その際、合理的に算出された中間利息を控除するのも構いませ
 ん。
 (もっとも、調停条項化することは難しく、当事者間で別途書面化す
 る必要があるし、その書面内容も、相当注意しなければならない)

 ただ、いくら一括で支払い済みだといっても、その後の状況の変化
 で、すでに支払った養育費が不相当になったら、請求権利者側
 は、追加請求できます。

 これをできないと定めることは、民法881条に違反して無効です。

 ただ、養育費支払い義務者が、のちに経済的に困窮して、すでに
 支払った過去の分を返してくれと言っても、これはおそらく認められ
 ないでしょう。
























        
Q4.毎月、決められた養育費をもらっているけど、子供が大病して、予
   想外の医療費がかかった。この医療費は請求できないの?
A4.養育費としては請求できませんが、子供の扶養請求権として請求
   できます。

   
 もともと養育費というのは、普通、子供を育てるのにこれだけかか
 るだろう、という一般的な金額です。つまり、普通に子供が育ち、普
 通に生きていくための金額に過ぎません。

 ところが、子供を育てていると、突発的な支出を強いられることは、
 かなりあります。典型例が「子供が重病になり、予想外の出費がか
 さんだ時」です。こういうときは、養育費の1年分や2年分など、すぐ
 にふっとびます。

 また子供が成人に達すると、事前の取り決めがない限り、監護親
 は、別居親に、養育費の請求ができまくまります。

 しかし、子供には、養育費とは別に、親に対し、扶養請求権があ
 り、突発的支出には、親権者である監護者は、子供の法定代理人
 として、別居親に扶養料を請求することができます。

 ただ、実務上、このことを知っている弁護士が少なく、現実に、家
 裁に扶養請求権の申立をする弁護士は少数のようです。

 養育費請求権と扶養請求権の違いは、次の2点です。

 第1は、養育費請求権の主体は、親であるが、扶養料請求権の主
 体は子供です。

 第2は、養育費は、子供の養育費に要する一般的概略的な権利で
 すが、扶養請求権は、より個別具体的な権利です。
























        
Q5.リストラで収入が激減した。決められている養育費を減額できる
   の?
A5.減額請求できる場合もあります。  
   
 養育費の金額は、両親の経済力に応じて変動します。ですから、
 養育費をもらう人、あるいは養育費を払う人の収入にかなりの変
 化が生じた場合には、当事者双方は、互いに約束した養育費の増
 額・減額を請求できます。

 そこで、家裁実務では、義務者が「来年は収入が減少することが
 確実だ」と言っても、とりあえずは、現在の収入で決め、現実に収
 入の減少があったら、あらためて養育費の減額請求をさせる取り
 扱いをしています。

 ところが、平成20年に、養育費の減額に関し、東京高裁で次のよう
 な判決が出ています。

 「調停の当時、当事者に予測不可能であったことが後に生じた場
 合に限り、これを事情の変更と評価して調停内容の変更が認めら
 れる。
 調停成立時、再婚相手の長女と養子縁組をし、トラックを買い替え
 るかレンタルで借りなければならない事情を認識していた支払義務
 者(父)としては、婚姻と養子縁組による社会保険料の増加及びト
 ラックのレンタル料の支払いによる総収入の減少については具体
 的に任してしていたか、少なくとも十分予測可能であったというべ
 きである。
 したがって、当該総収入の減少で養育費を減額すべき事情の変更
 ということはできない。」

 この判決だと、予測可能な事情は減額理由にできないことになって
 しまいます。すると、養育費を定めたのちに転職した場合、「減収
 は予測可能だったから減額理由にはできない」という論法が可能と
 なります。それでいいのか、議論は分かれるでしょう。

























        
Q6.中国人の女性との間で子供ができて、母子とも、中国にいるけ
   ど、養育費の算定にあたり、日本と中国の物価差は考慮されない
   の?
A6.考慮される場合もあります。
   
 現在、婚姻費用・養育費は、基本的には、算定表に基づいて行わ
 れています。しかし、渉外問題が絡んだ場合、つまり、義務者ある
 いは権利者が、日本よりも物価が安い国に住んでいる場合は、算
 定表をそのまま適用してよいでしょうか?

 この問題を正面から扱ったのが、大阪高裁平成18年7月31日判決
 です。

 この事案では、日本人の妻が、タイに住む夫に対し、婚姻費用を
 請求したケースです。タイに住む夫には、内縁のタイ人の妻とその
 間の子供がいますが、この場合、算定表を適用するにあたり、タイ
 と日本の物価の違いを考慮するかというのが争点になります。

 大阪高裁は、

 @タイの物価が日本に比べて格段に安いのは公知の事実だ。
 Aタイでは、日本の半額程度の費用で生活できる。
 B算定表の適用にあたり、夫と内縁の子供との生活指数をいずれ
   も標準的算定方法に示された数値の2分の1としてっ標準的算
   定方法を用いて婚姻費用を算定しました。

 なぜ2分の1かは、根拠が定かではありませんが、実務では、非常
 に重要な判例であることは間違いありません。





















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